第5回 素直に生きる
「逆境」の経験は人生にとってプラスとなる
逆境とは、その人に与えられた尊い試練であり、乗り越える程に人は強くなります。現代まで名を遺す偉人たちも、度重なる逆境に対して、不屈の精神で生き抜いた人物ばかりです。そう考えると逆境や苦境というものが人生に与える影響は非常に大きいものだということが分かるのではないでしょうか?しかし、逆境がなければ人は成長しないという思い込みは間違いであり、順境な人生であったとしても、その人の心持ち次第で成長することはできるのです。要は逆境であれ、順境であれ、その与えられた人生に対して、感謝の想いを忘れずに素直に生きることで人生は豊かになるということです。謙虚な心を忘れ、素直さを失ったとき、逆境は卑屈を生み、順境は自惚を生む種となります。与えられた環境に対して感謝をし、素直に生きることは、人を強く正しく聡明にしてくれます。逆境に対しては、抜け出すために勤勉さを忘れずに、日々の努力を積み重ね続けることが大切ですし、順境な人は、それに満足するのではなくまだまだ世のために貢献できるという高い志を持ってさらに伸びていくのです。その道のりは異なりますが、素直に生きることで同じような強さと正しさ、そして聡明さを手に入れることが出来ます。ここで大切な言葉は、前述にある「逆境は卑屈を生み、順境は自惚を生む」という言葉です。人は、逆境の状態になると周囲を羨み妬む気持ちが生まれてしまいます。
素直と謙虚さが人生を良くする
「なぜ、自分だけがこんなに辛くて苦しい思いをしなければいけないのか」と思ってしまいます。人の心は弱いモノなので、どうしても卑屈になってしまう気持ちもわかります。また、逆に順境、順調に進んでいる状態であれば、自惚れを生み、慢心に繋がり、いつしか天狗になり人の想いも分からない人間になる可能性を秘めています。つまり、どのような人生であっても『素直さ』を忘れずに、人としての正しさに基づいて、感謝を忘れず謙虚さを常に持ち、ただ真っ直ぐにその道を進むことが人生を良くする道であるということです。
自然の流れのように正しく素直に生きる
ところが、私たちはなかなか素直に生きるということが出来ません。どうしても自分の感情や立場、地位、名誉に囚われてしまい素直に生きることができないのです。それゆえ、かえって状態をさらに悪くしてしまうのです。素直な心とは、人の言うことに対してなんでもハイハイと答えることではありません。無邪気な心のことでもなければ、幼児の心のことでもありません。自然を見ると分かるのですが、例えば朝、太陽がきちんと東から出て西に沈む。時間が過ぎると、春が来て、夏が来て、秋が来て、そして冬が来る。こういうごく自然な流れに従い生きるということです。人もやるべきこと、なすべきことをきちんとできるかどうか?正しい判断が出来るかどうかです。逆にしてはいけないことは絶対にやらない。そういう振る舞いができるかどうかです。人は立場や自らの感情により判断を行うので、自然の理法に従い素直に生きるということは、簡単そうに聞こえますが、決してそう易しいことではないのです。