全てのお客様に対して、「誰」が「いつ」対応しても公平な対応が出来る健康企業を目指す。
大学当時に言われた「授業料を稼いでこい」という父の言葉
愛知県の安城市を拠点に配置薬業を営むエース内山薬品株式会社。近年ではデイサービス事業なども展開し事業を拡大している地元で愛される健康企業だ。現社長の内山匡真氏は、生まれた時から配置売薬の父の元で、「薬屋の息子」として育った。小学校の頃、周囲の友人たちが、パイロットや運転手、プロ野球選手などの夢を語る中、自分自身は薬屋になるのが当然と思い込んでいた。そして、そのまま薬屋を継いだ。
高校を卒業し、大学在学中に父から「授業料を稼いでこい」と得意帳(現代でいう顧客名簿)を渡され、友人たちが夏休みを謳歌している間、意味も解らず必死にお客様のところを訪問し、授業料を稼ぐのに必死に働いた。それは毎年続き、夏休みが来るのが嫌で仕方なかった。しかし、その当時の経験が、今、非常に役立っているという。授業料を稼ぐためには売上を上げなければならない。そこで、どうしたらお客様が喜んでくれるのか?という思考に初めて辿り着く。そうして必死に考える癖が、学生時代に自然と培われていたことに、今になって気付いたという。
大学卒業後、父の元で薬屋として働くと思っていたが、父は「外飯を食ってこい」と意外な言葉を発した。そして精米メーカーの営業として働いた。その会社は当時、牛丼最大手チェーンの吉野家にもお米を卸す業界では最大手の部類に入る企業で、そこで営業職として飛込営業をし、お米を売り歩いた。入社当時、国内では米が不足しており需要しかなかったことに加え、ネームバリューのある会社だったため、売るモノがなくて困っても、売ることに困ることはほとんどなかったという。約1年、そこでお世話になり、配置業界に戻ってきた内山社長は、会社の名前が売れていないことの大変さを痛感したという。
父が経営するエース内山薬品は、入社当時、年配の従業員が多く在籍していたが、当時の社長である父は、「息子が戻ってくる」と思い切って若い従業員を増やしていった。
営業として大切なことを教えてくれた母の存在
営業職として家業に戻ると、父から何度も「お得意先を回って売って来い」、「売れないなら、せめて薬箱を置いてこい!」と言われた。しかし、実際の営業現場で、お客様に「置いてください」の一言が怖くて言えなかったと内山社長は話す。今思えば配置薬をご家庭においていただくということは、「お客様の健康をサポートする」手段でしかなく、何も怖いことはないはずだが、当時は「売上」が第一優先になっていた為、断られることに対して恐怖感を持っていた。そんなことで悩んでいる時に「お客様の未来の健康を思えば提案することに躊躇することなんて全くないはず」と母から言われた。実は、内山社長の母も配置薬の営業として現場を回っており、入社当時はよく母の横について一緒にお客様の元を訪問していたそうだ。母の性格は、引っ込み思案の大人しい人間性で、いわゆる「営業」とは全く結びつかない人物像だが、いざ、お客様を前にすると全く躊躇がなくなる。それは「お客様のことを真剣に想うからこそ」と母から何度も教わった。躊躇がないと言えば、岡山県にある株式会社フカイの会長も、お客様にチラシに書いている花のイラストを持っていき、「花束を持ってきたで」と満開の笑顔で渡し、思わずお客様も笑顔にするような人だったことを思い出した。その母から学んだ営業マンとして大切なことを今でもよく思い出す。そんな母や業界の先人達から学んだことは、自分自身が商品を本当に愛し、お客様の健康の為に全力で取り組める人間性の大切さだった。この教えは今でも内山社長の根幹にあり、お客様の本当の健康を考えたら、価格が高い商品であったとしても紹介してあげないと、使命感に近い思いがある。従業員は「価格が高いから断られそう」というが、断られたらそれはお客様の選択だから仕方がないが、その人のためを思っていいているのだから何も問題はない、と教えている。逆に「良い商品を紹介しない」ということは、その営業マンが、本当にお客様の未来を考えておらず、売ろうというセールスの意識の方が勝っているからであると言う。営業マンは母のように「真剣に人を想う力」が必要なのだと内山社長は話す。
お客様に対する情報格差をなくす取り組みを
しかし、饒舌な営業マンもいれば、口下手な営業マンもいる。営業マンが担当として、どれだけお客様のことを大切に想っていても、それを言葉として出せなければ意味がない。それを防ぐために、内山社長は、全商品のトークマニュアルを作成しているという。1から10まで、全てトークマニュアルがあり、毎朝1時間のセールストーク勉強会を全員で行っているという。「説明する人によって情報の差があれば、それはお客様にとって不公平でマイナスでしかない」との思いから、マニュアルによる社員教育に取り組んでいる。これについては業界の仲間たちからも賛否両論があるとのこと。しかし、内山社長の理想は、全社員が同じことを言えるようになり、お客様に対して情報の格差をつけないことで、お客様に対するマイナスやデメリットを失くそうと取り組んでいる。お客様の前で真っ白になって、全く何も言えなくなるよりは断然良いという考えだ。マニュアル作成に加えて、独自のパウチなどのサポートアイテムも自ら考案し、従業員の教育に取り組んでいる。最初はいろいろとトラブルもあったが、続けるうちに、従業員の多くが、しっかりとお客様に情報をお伝えできるようになったという。
商品の知識やそれに付随する病気や薬の知識がないと、せっかくお客様がヒントやサインを出したとしても、それに気づけない。それはお客様に対してマイナスでしかない、そういったことを減らせるように様々な勉強にも4年前から本格的に取り組んでいる。そして、お客様に幸せで健康になっているか将来像を想像していただけるように、惹かれるようなフレーズをお客様のために全員で考えるようにもしている。
「先用後利」が続く理由が理解できた瞬間
「昔はね、エース内山薬品では営業マンがいかに現場で商品販売をするか?に力を入れていたんだ」と、内山社長は後悔をにじませながら話す。すぐに現金が入り資金繰りも楽になるので、現場での商品販売に力を入れてきたが、そういったお客様は取引が続かなくなった。今も長く顧客としてお付き合いをいただいている多くのお客様が配置薬の置き込みのお客様だという。現場での商品販売にこだわってしまうと、売ることを第一に考えてしまい、後々のクレームや押し売りされたというトラブルにもつながる危険性もある。お客様ともめるために商品を薦めたわけではなく、健康でいて欲しいからこそ、薦めたのだ。なのに結果はトラブルに繋がる・・・しかも、現場で商品販売ができたとしても、大半は2回3回と続かない場合が多い。やはり先に配置薬を置いて使ってもらい、利便性を感じていただき、私たちエース内山薬品という会社を見ていただき、そうした先用後利の仕組みこそが、お客様との長い付き合いを構築する大切なカギであることを改めて学んだ。置き薬がなぜ江戸時代から現代まで長く続いているか、それにはちゃんとした理由があるのだと気づいた。使った分だけの支払いは信用や信頼が構築されやすいし、継続もされやすい。その信頼の積み重ねが、今も商品をご使用いただけている最大の理由だと確信を持っている。昔は商品を置いて寝かせているなんてもったいないと思っていたが、お客様との信頼を比べた時に、圧倒的に信頼の方が大切だという結論に辿り着いた。そのことに気づいてからは置き込みに変えていった。また、置き込みにしていると、もしスタッフが変わってしまっても商品の信頼という見えない蓄積があり、続いていきやすい。現場での商品販売を主軸にすると、その営業担当者の力量に頼る部分が出てきてしまう。そういった部分が置き込みにはない。だからこそ、しっかりと置いて、そのあとに売れるという循環の「先用後利」が大切で継続してきた理由なんだと内山社長は笑顔で話した。
孤独感と戦い、存続させ続ける経営者
今でも営業の現場に足を運び、自らも営業マンとして走る内山社長は、社長に就任してとてつもない責任感が生まれたと語る。営業だけをしていればよかった時代は、お客様に喜んでもらうことだけを考えていればよかった。しかし、社長に就任してからは、この会社で働いてくれている従業員やスタッフはもちろん、そのご家族も、いわばこの会社が生活を支えている基盤だと思うと、責任感の大きさはけた違いになったという。その責任に押しつぶされそうになることもあるというが、その孤独感と戦うことも経営者としての責務だ。幸いにも、内山社長は良き理解者として共に経営を考えていける弟が傍にいることに対して大きな感謝をしていると話す。
また、お客様が喜ぶものを考えて、医薬品以外の化粧品などの販売も行ってきたが、父には「薬に関係ないのに、薬屋がそんなものを売るなんて」と言わたときもあった。現在、所属しているTマークでは「お客様に喜んでいただく」ことを最優先に考える組織であり、お客様が喜んでくれるのであれば、そういった商品も必要なのだという。エース内山薬品も、健康に関わる様々な商品を取扱っている。配置薬業者として誇りを持つのは良いことだが、この今の時代に、そういったこだわりが強すぎると自分達も苦しくなる上に、お客様のためにもならない。商品の種類に限らず健康面全体でサポートできるようになっていきたいと考えている。
エース内山薬品の企業理念は「お客様の健康第一」。そのために商品知識はもちろん、健康に関する知識をしっかりと蓄えていかなくてはいけないが、今の業界全体で考えても勉強が足りていない。内山社長は、お客様に分かりやすく伝えるためには自身で深くまで理解し、質を高めないといけないと、これからの業界全体にも警鐘を鳴らしている。
エース内山薬品株式会社 〒446-0042 愛知県安城市大山町一丁目4番地1
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